個人型確定拠出年金(通称iDeCo)。
専業主婦には意味がないと思われがちですが、すでにNISA枠を使いきっている方には大きなメリットがあります。
ただし、40代後半以降の方は注意が必要なこともあるので、そのあたりを深掘りしたいと思います。
iDeCoが専業主婦には意味がないと言われる理由
そもそもなぜiDeCoが専業主婦には意味がないと言われるのでしょうか?
それはiDeCoの最大のメリット、税金の「所得控除」が受けられないことにあります。
税金の所得控除とは、iDeCoの場合、税金計算の際に掛金全額を所得から引いてもらえる、つまり掛金全額分だけ所得が少なくなったようにできるということです。
この所得控除により、税金が年間掛金の約20%分安くなります。(所得税と住民税がそれぞれ一般的な税率約10%の場合)
例を挙げましょう。
掛金が毎月2万円の人(年間掛金24万円の人)の場合
お得になる額は年間掛金×20%なので24万×20%で4.8万円となります。
このお得額ですが、「税金が安くなる」ということなので、そもそも税金のかからない専業主婦だとお得度がゼロなのです。
そりゃそうですよね。
そもそも税金がゼロなんですから、それ以上税金を安くしようがないですもんね。
この所得控除が受けられない点を挙げて「専業主婦にはiDeCoは意味がない」と言われるのです。
専業主婦でもiDeCoで受けられるメリットがある
上で専業主婦は所得控除が受かられないことを述べました。
では専業主婦にiDeCoは本当に意味がないのでしょうか?
いえいえ、専業主婦にもメリットがありますのでiDeCoに加入する意味はあるのです。
そのメリットが「運用益の非課税」と「受け取るときの控除」です。
運用益の非課税とは
運用益の非課税というのは「利益が出ても利益に対して税金はかかりませんよ」ということです。
具体的に見ていきましょう。
専業主婦が目一杯掛金を出すものとして、月2.3万円をiDeCoに預けていく例で考えます。
運用がごく普通程度にうまくいったと仮定して年利回り4%とします。
(米国や全世界を対象にした低コスト優良インデックスファンドだとこれくらい見込めます。もしどの商品がいいのかわからない場合はお問い合わせください)
これを20年続けたとすると約290万円もの運用益(利益)が出ます。
普通ですと、この290万円の利益に約20%の税金がかかるので、290万円×20%で58万円の税金がかかることになります。
ところがiDeCoの場合、この税金がゼロになるのです。
つまり、58万円節税できるので結果的に58万円多くもらえるということになります。
これは大きいですよね?
受け取るときの控除とは
iDeCoはいつか受け取るときが来ます。
その際、これまた税金がかかってくるのですが、その税金を大幅に削減してくれるのが「受け取るときの控除」です。
iDeCoの受け取り方法は3パターンあります。
1.一時金として全額受け取る
2.年金として分割で受け取る
3.一時金と年金を併用して受け取る
以上3パターンです。
そしてどのパターンで受け取っても税金を大幅に割り引いてくれます。
「 1.一時金として全額受け取る 」の場合は「退職金控除」によって、「 2.年金として分割で受け取る 」の場合は「公的年金等控除」によって、「 3.一時金と年金を併用して受け取る 」の場合は「退職控除」と「公的年金等控除」の併用によってそれぞれ税金を割り引いてもらえます。
特に「退職控除」は税金の割引額が大きいので、税金ゼロで受け取ることができることが多いです。
この受け取るときの控除が大きいのがiDeCoのメリットになります。
40代後半以降の人は要注意:iDeCoで損する可能性が!
ここまで見てきた人の中には「専業主婦でもiDeCo加入がお得だー!」と思って下さった人も多いかと思います。
ここで大切な注意点が。
それは「専業主婦で40代後半以降の人のiDeCo加入は気をつけるべし!」です。
40代後半以降で何が問題になるかというと、加入期間が短くなることが問題になります。
加入期間が短いと大損するかも?
iDeCoに45歳で加入したら15年、50歳以降に加入したら10年と、短い期間しか加入期間がないことが問題になってきます。
私がおすすめする 米国や全世界を対象にした低コスト優良インデックスファンド に投資した場合、その成果を最大限にするためには20年以上の加入期間があった方がいいからです。
もし加入期間が10年~15年ほどしかない場合、受け取る段階でマイナス運用されている可能性が否定できません。(もちろん20年超の期間でもマイナス運用されている可能性は否定できませんが、マイナス運用の可能性は格段に低くなります)
さきほどこの投資先だと4%ほどの利益が見込めることをお話しました。
確かに20年以上の運用期間があれば、ほぼ4%程度の利益が見込めるのですが、これが10年~15年だと少し短かすぎるのです。
年金受け取りにして、運用期間を延ばすこともできるのですが、その場合は毎月いくらか(2022年2月現在で70円程度ですが)のコストもかかってきますし、受け取りのたび(毎月なら毎月)500円ほどの振込手数料などもかかってきます。
この手数料(コスト)がバカになりませんから、年金受け取りには慎重にならざるをえません。
かといってマイナス運用での一括受け取りは明らかに損ですし、消去法で多少損でも年金受け取りをするしかなくなってしまいます。
このように、加入期間が短くなる40代後半以降の専業主婦の方のiDeCo加入はデメリットが出てくる可能性が高まってくるため、やめた方がベターかもしれません。
加入期間が短いと「運用益の非課税」メリットも小さくなる!
また、40代後半以降の加入で加入期間が短い場合は「運用益の非課税」という大事なメリットも小さくなります。
最初の例と同じもので見ていきます。
専業主婦が月2.3万円をiDeCoに預けていき、年利回り4%で運用した場合
最初の例では20年間運用しましたが、40代後半以降ですと、10年~15年の運用になります。
運用益(利益)は62万円(10年の場合)~152万円(15年の場合)です。
これに税率20%をかけると、12万円~30万円ほどになります。
これが「運用益の非課税」メリットの額になります。
12万円~30万円というと大きな額ではあります。
でも加入期間が短いと、先ほど言ったようにマイナス運用になっている可能性や、その場合に年金受け取りをせざるをえない状況が考えられます。
そうすると、12万~30万円ほどしかない利益が吹き飛んでしまう可能性も。
これは大きなデメリットになります。
なのでやはり40代後半以降の専業主婦の方のiDeCo加入はよくよく考えた方がいいように思います。
大損する可能性もわりとあると思われるのでできれば加入しない方がいいと個人的には考えます。
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